日本で機械エンジニアが不足している?現状と企業がとるべき対策
人事担当者のなかには、機械エンジニアの人手が足りず、採用方法に悩む方もいるでしょう。専門的な知識・経験を要する機械エンジニアという職種は、人材不足が深刻化する日本経済のなかでも特に採用が難しい領域となっています。
本記事では、機械エンジニア不足の現状や企業がとるべき対策について解説します。事業の維持・拡大にあたって優秀な機械エンジニアの確保を目指しているという方は、ぜひ参考にしてみてください。
●機械エンジニア不足の現状
経済産業省が平成30年に公表した「理工系人材需給状況に関する調査結果概要」
https://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/jinzai/1-2_shiryou.pdf
では、機械エンジニア不足の現状が浮き彫りになっています。
同調査における社会人アンケートでは、「現在の業務で必要とする分野と大学で学んだ分野との比較」において、企業が必要とする分野として「機械工学(設計、エンジン、材料、流体等)」が全職種・全業種のなかでもっとも大きい数値を記録しています。
そして、「大学で学んだ分野」とのギャップがきわめて大きく、理工系人材のなかでも「就職後の学び直し」が求められる分野になっています。
さらに、企業アンケートのなかでも「5年後技術者が不足すると予想される分野」として「機械工学(設計、エンジン、材料、流体等)」がもっとも高い12.4%となりました。
技術者が不足する理由としては「他社が当該分野の採用数を増やしているため」や「業界や自社の認知度が低く集まらないため」などが挙げられています。
各産業の高度化に伴って機械エンジニアの需要は増しており、人材獲得競争が激化するなかで予定した人材を確保できず、機械エンジニア不足に悩む企業が増加していることがこの調査から読み取れます。
●なぜ機械エンジニアが不足しているのか
日本において機械エンジニア不足が起きている背景としては、以下のような要因が挙げられます。
・日本国内の少子高齢化
・専攻する学生の少なさ
・学び直しの敷居の高さ
それぞれの要因について見ていきましょう。
◎日本国内の少子高齢化
まず、そもそも日本国内全体の人手不足が加速しているという現状があります。少子高齢化によって生産年齢人口が減少しており、需要の増している機械エンジニアにおいては人材の獲得競争がさらに激化しています。
日本の人口減少に対する企業レベルの対策は限界があるため、現状を踏まえたうえで対策を検討するほうがよいでしょう。例えば、日本人の機械エンジニアがうまく採用できないなら、外国人エンジニアを採用する事が考えられます。
日本政府も「高度人材」などの制度を設けることで専門的な知識・技術を持つ外国人材の受け入れを強化しており、企業側にとっても今後重要な選択肢の1つになるといえます。
関連記事:日本における外国人受け入れ制度とは?技能実習や特定技能、高度人材について解説
◎専攻する学生の少なさ
前述の経済産業省による調査でも明らかになっている通り、機械工学は「現在の業務で必要とする分野」と「大学で学んだ分野」に大きなギャップがある分野となっています。
技術の高度化に伴って各産業で機械エンジニアが求められているにもかかわらず、大学で機械工学を学んだ人材の数は十分とはいえません。新入社員に専門的な知識を1から身につけさせるには多大な教育コストもかかるため、企業にとっては大きな課題だといえるでしょう。
若年層の関心を高めるため、小学校・中学校・高校などに通う子どもたちを対象とした「STEM教育(Science Technology Engineering and Mathematics:科学・技術・工学・数学)」に注力するといった動きは見られるものの、企業の機械エンジニア不足解消につながるのはまだまだ先になるはずです。
◎学び直しの敷居の高さ
機械エンジニアという職種の敷居の高さも、人材不足につながっている要因の1つです。
機械エンジニアとしての役割を果たすには、高度な技術・知識が求められます。エンジニアの多くが機械工学の「学び直し」のニーズを感じていることからも、業務を通じて学ぶ「OJT(On the Job Training)」には限界があるといえるでしょう。
学習時間をしっかり確保し、基礎から体系的に知識を身につけなければ、機械エンジニアとして活躍するのは難しいと考えられます。
●機械エンジニア採用に向けた対策
企業として機械エンジニアの確保をスムーズに行うための対策として、ここでは以下の2つをご紹介します。
・就業環境の整備
・外国人エンジニアの採用
それぞれ順番に見ていきましょう。
◎就業環境の整備
機械エンジニアの人材を確保するには、就業環境の整備が欠かせません。まずは、機械工学を専攻した人はもちろん、専攻していなかった人でも安心して業務を遂行できるよう、社内の研修やセミナーを充実させるのが1つの手です。
求職者が感じる「機械エンジニア」という敷居の高さを払拭できれば、人材獲得がしやすくなるはずです。もちろん、実際の業務にスムーズに移行できるよう、現場レベルで必要な知識が身につく実践的な研修プログラムを用意する必要があります。そのためには、先輩エンジニアたちの協力を仰ぐ必要があるでしょう。
また、労働環境の整備も重要です。ワークライフバランスが整った就業環境であれば、より多くの人材を惹きつけられるはずです。
◎外国人エンジニアの採用
機械エンジニアの不足を補うには、外国人材の活用といった新たな選択肢にも目を向ける必要があるでしょう。外国人エンジニアを採用すれば、人手不足の解消のほかにも、海外の最新技術やトレンドを取り入れたり、組織のグローバル化を促したりといった効果が期待できます。
異なる文化や価値観を持つ人材が組織に加わることで、新しいアイデアや発想が生まれる可能性も高まるでしょう。
前述の通り、日本政府は「高度人材」などの制度を設けることで、専門性の高い外国人材の活用を促進しています。日本人エンジニアの絶対数が限られるなか、企業の発展を目指すなら新たな人材確保の手段として外国人材の活用を検討していくべきだといえます。
もちろん、外国人材の採用にはビザの手配や既存社員とのコミュニケーションといった課題もあります。外国人材をスムーズに迎え入れるためには、まずは外国人材の派遣に特化したサービスなどを利用するのがよいでしょう。
外国人派遣を専門とする企業に依頼すれば、自社のニーズに合った外国人エンジニアをスムーズに採用できます。
関連記事:外国人採用のメリットと注意点とは|最新動向を踏まえて解説
●まとめ
本記事では、機械エンジニア不足の現状や企業がとるべき対策について解説しました。
経済産業省の調査でも明らかになっている通り、多くの産業において機械工学に精通した人材が求められているなか、十分な数のエンジニアがおらず、将来にわたって不足が懸念される職種となっています。
企業としては、機械エンジニアが就業しやすい環境を整備するのはもちろん、日本国内の少子高齢化を踏まえて外国人材の活用など新たな選択肢も柔軟に検討していくことが大切だといえるでしょう。
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