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拡大し続ける日本のエンジニア不足|IT業界の実情と今後の対策

拡大し続ける日本のエンジニア不足|IT業界の実情と今後の対策

日本では長年エンジニア不足と囁かれてきましたが、今後もエンジニア不足の状態は解消されずさらに不足人数が増す見込みとなっています。なぜ、エンジニア不足が進んでいるのか、現状と原因について紹介します。また、エンジニア不足を解消するための対策もあわせて紹介します。

日本のエンジニア不足の現状

経済産業省が平成28年に発表した「IT人材の最新動向と将来設計に関する調査結果」によると、2019年をピークにIT関連事業への入職者は退職者を下回ると予測されており、IT関連事業への従事者は減少する見込みとなっています。その大きな要因は人口の減少にあるとされており、少子高齢化が進む日本ではIT関連事業の労働不足が解消される予測は立てられていません。また、労働者が減る一方でITの需要は高まりを見せており、需要と供給のバランスが取れないことで、さらにIT人材の不足が進んでいるという問題があります。2015年時点で既に17万人のIT人材が不足しており、2030年になるとIT人材不足はさらに深刻化し約59万人の人材不足に陥る見込みとなっています。


・分野別にみるエンジニアの不足状況

分野別にIT人材の不足状況を見てみると、特に深刻な状況が予想されるのが「ビッグデータ」「IoT」「人工知能」「ロボット関連」「情報セキュリティ」といった今後需要がさらに拡大する見込みのある分野です。「ビッグデータ」「IoT」「人工知能」分野に携わる人材は2016年時点で約15,000人ほど不足していましたが、2020年には約48,000人にまで不足人数が増加する見込みとなっています。さらに深刻なのが情報セキュリティ分野で、2016年時点で既に約13万人も不足しており2020年には不足数が19万人にも上るとされています。


・ポジション別にみるエンジニアの不足状況

ポジション別にIT人材の不足状況を見てみると、年代によって不足が見込まれるポジションは異なります。今後5年の間に最も不足する人材をITベンダーによると、若手人材は「開発系人材(アプリケーション関連)」、中堅人材は「プロジェクトマネージャー」、幹部・指導者は「新事 業開発・事業創造人材」のポジションが最も不足する見込みと予測する。また、採用に対する意欲はあるものの、求める人材に出会えず採用ができないと感じている企業が30%に上がるという結果も明らかになっています。

日本のエンジニアが不足している理由

会議する多国籍の男性たち

日本のエンジニアが不足している要因の一つは少子高齢化にあり、労働人口が減少しているため人材が不足しているという現状があります。また、労働環境や技術の進歩のスピードなども、エンジニア不足を加速させる要因となっています。日本のエンジニアが不足してる要因について、詳しく見ていきましょう。


・少子高齢化

少子高齢化が年々進んでおり、労働人口は減少していく傾向にあります。IT業界も少子高齢化の影響を受け、2019年をピークに人材供給は減少していくと言われています。一方でITの市場規模は年々拡大しており、今後も右肩上がりに拡大していくと予測されています。2018年までは人材供給が増加傾向にありましたが、それでもIT市場の需要に供給がおいついておらず2018年時点で約24万人の人材不足に陥っていました。少子高齢による労働力人口の減少とIT市場の需要の増加により、需要と供給のバランスが取れなくなっており人手不足の状態が生み出されています。


・技術の進化スピード

企業が求めるスキルにエンジニアが追いつけてないというのも、人材不足を生み出している一つの要因です。IT業界における技術の進歩スピードは非常に早く、エンジニアは毎年のように新たな技術の習得を求められます。一つの技術を習得し終えたかと思うと、また新たな技術の習得を求められるのは珍しいことではありません。めまぐるしいスピードで進化する技術に対応するの簡単なことではなく、企業が求めるレベルにエンジニアの技量が到達しにくいという問題もあります。経済産業省が実施した調査によると、中途採用で人材を採用したいと考えている企業の約40%が求める人材が採用できないと感じているという結果も出ています。


・労働環境

IT業界の離職率は10%程度となっており、全職種の中で飛び抜けて高い数字というわけではありません。しかし、10%という数字はあくまでIT業界全体の数字であり、企業によっては離職率が30%と非常に高い数字のところもあります。離職の大きな要因となるのが労働環境です。エンジニアの仕事といえば納期の関係で毎日のように残業を強いられたり、仕事量の割に給料が安いこともあり、企業によっては労働環境が悪く、長期間の就業が難しい場合もあります。近年は働き方改革により労働環境を見直す動きもありますが、すべての企業の労働環境が整っているわけではありません。


日本のエンジニア不足の将来と対策

パソコン画面を注視する女性

エンジニアの需要は増加していく傾向にあり、人材不足を補えないだけでなく今後ますます人材不足が深刻化していく見込みとなっています。今後も拡大が見込まれる人材不足を解消するために有効な対策を見ていきましょう。


・外国人エンジニアの活用

近年日本では人材不足を補うために、日本人エンジニアのみならず外国人エンジニアも積極的に採用していく傾向にあります。実際に2008年から2015年までの7年間で、外国人エンジニアの就労人数は約2倍に拡大しました。一方で、今後最も不足する分野と考えられている「ビッグデータ」「IoT」「人工知能」などの先端IT技術の分野で活躍する外国人エンジニアは、2割程度に留まっているという現状もあります。人材不足を補うために今後さらに外国人エンジニアを有効的に活用していくことが、求められています。

・労働環境の改善

人材不足を解消するため多くの人にエンジニアとして働きたいと思ってもらえるよう、労働環境を整えていくことが大切です。企業にもよりますが、長時間労働や給与面などエンジニアが働きにくい労働環境が敷かれていることもあります。中でも給与に対する不満は高い傾向にあり、国別に見ると給与に対する満足度は調査対象8カ国の中で日本が一番低くなっています。給与に満足している人の割合はわずか7.6%と非常に低い数字で、最も高い数字を出しているアメリカの57%と比較すると大きな差があることがわかります。エンジニアに選ばれる企業になるよう、人材不足を補うためには企業としても努力を重ねていく必要があります。


・人材育成の強化

エンジニアのスキルアップ支援も、人材不足解消に有効的です。IT技術の進歩は非常に早く、次々に新たな技術への対応を求められます。最新の技術に対応するために新規に採用を行うことも大切ですが、人材育成をしっかりと行えば既存の社員で業務をカバーできることもあります。会社の教育・研修制度や自己研鑽支援制度に対する満足度調査において、会社の支援に満足していると感じている人の割合は5.2%と非常に低くなっています。また、自主的に勉強している人の割合も20%を切る数字となっています。エンジニアが必要な技術を身につけられるよう、教育や研修を充実させるとともに自己学習を促し支援していくことも重要となります。


まとめ

少子高齢化が進む日本では労働人口は減少していく傾向にあり、IT業界においては2019年をピークに人材供給が減少していくとされています。一方でエンジニアの需要は年々増加していく傾向にあり、需要と供給の差は開くばかりで人材不足はさらに深刻になる見通しです。国内の人材だけで人材不足を補うのは難しく、外国人エンジニアも積極的に採用していく必要があります。また、急速に成長していくIT技術にエンジニアが追いつけず企業が求めるレベルに到達しづらいという問題もあり、エンジニアのスキルアップ支援や体制を築くことも求められています。

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