メルカリが外国人エンジニアを大量採用できた理由と、日本企業が取るべき行動について考察してみた
メルカリが外国人エンジニアを積極的に採用しているという話を聞いたことがあるでしょうか。2018年10月の新卒採用では、50人中44人が外国籍、そのうち32人がインド人でした。そして2021年には全社員の約半数が国外出身メンバーになったとのことです。この記事では、メルカリのこれまでの動きと創業者山田さんの考え方、実際に採用された外国籍の社員が何を考えて入社したかについてご紹介します。それを踏まえ「実際に採用された外国籍の社員が何を考えて入社したのか」をまとめ、日本企業がこれから取るべき行動について考察を加えました。
ページ下部にて外国籍エンジニア採用のコツをまとめた資料をダウンロードしていただけます。採用をご検討中の企業様の一助になるかと存じますのでぜひご覧ください。
メルカリの考え①:メルカリ創業前から既に世界に目を向けていた
創業者の山田さんは、今から約13年前の2007年時点ですでに「日本発のサービスを世界の人に使ってもらいたい」と語っており、世界に目を向けていました。
■創業者山田さんの経歴
山田さんの経歴を簡単にまとめました。
- 大学在学中に楽天インターン。楽天オークションの立ち上げを経験。
- 2001年ウノウ設立。ソーシャルゲームなどがヒットしたあと、米ジンガに会社を譲渡。
- 2013年メルカリ設立
- 2015年メルカリが2000万ダウンロード記録
- 2017年メルカリの累計ダウンロード数が1億件を超える
- 2018年メルカリが東京証券取引所マザーズに新規上場、終値ベースの時価総額は約7172億円。
2019年3月時点の総資産は1440億円で、日本長者番付33位。上場する前は「日本で唯一のユニコーン企業」としても有名でした。
※ユニコーン企業…企業としての評価額が10億ドル(約1250億円)以上で、非上場のベンチャー企業。莫大な利益をもたらす企業として世界中から注目を集める。
■ウノウ株式会社での山田さん「既に世界進出を視野に」
2007年のインタビューではすでに「世界を視野に入れている」発言をされています。
- 学生時代からインターネットの盛り上がりを感じる
- 楽天に内定後、楽天オークションの立ち上げにかかわる
- 卒業後は早稲田大学の教授とネットベンチャーの支援などを行う
- 人脈ができ、仕事をもらえるようになり、独立意欲とタイミングが合ったところで起業
- 日本発のサービスで海外で使われているwebサービスが一個もないため、世界中の人に日本発のサービスを使ってもらうことが目標
- インターネットビジネスが好きなので続けられるところまでは続けたい
- 自分の限界を感じたら後進を育てる側に回りたい
若い頃からインターネットビジネスを始め、世界を視野に活躍されてきた方です。
メルカリの考え②:投資に積極的な文化
メルカリのバリューのひとつに「Go Bold(大胆にやろう)」が掲げられています。メルカリは失敗を恐れず、投資に積極的な文化があり、2014年のテレビCMにも巨額の資金を投じています。
■ベンチャー企業が、広告費4.5億円投資
メルカリは当初、フリマアプリの中でも「その他」に分類されるほどマイナーなアプリだったため、後発のサービスとして大胆に攻めるしかない状態でした。2014年3月からテレビCMなどを一気に加速させたため、一般への認知が広まったイメージがあると思います。しかし、実はCMを打つことが決まっていない2013年の年末からCM制作を始めていました。2013年の年末にCM制作を始め、2014年3月に15億円の資金調達に成功し。2ヶ月後の2014年5月にはテレビCM開始。テレビCMに3億円、オンライン広告に1.5億円の広告費をかけました。資金調達のうち1/3を広告費として大胆に投資したのです。また、ヤマト運輸とのコラボで「らくらくメルカリ便」を実現させました。これにより、配送面が強化されました。toCを増やさないといけない運送業界の流れの中で、メルカリが入ることによってヤマト運輸にプラスになる提案をし、まだマイナーだったメルカリがヤマト運輸とコラボできました。
■インドでの採用活動
優秀な人材が多いと言われているインドでの採用活動も積極的に行われていました。これも投資の一つです。優秀な人材獲得の競争率が高い中で採用活動を成功させた理由は、「ハッカソン」というイベントを開催したことにあります。ハッカソンとは、プログラマーやデザイナーで構成された複数のチームが、数時間から数日間でアイディアを出し合い、その成果を競い合う開発イベントのことです。「ハッカソン」でインドの優秀な学生からの認知度を高め、インドの大学の採用担当者からの信用度を高め、採用につなげられました。インドの中でも特に優秀なエンジニアを輩出している「インド工科大学」では、勢いのある「ユニコーン企業」が人気です。メルカリは2018年時点で、日本唯一のユニコーン企業だったため、自身の力を試したいと考える学生の注目を集めました。
インド人エンジニア採用についての具体的なエピソードをご紹介しますね。2018年10月のメルカリの新卒入社者のエンジニアは50人いましたが、そのうち44人が外国籍です。インドの名門大学「インド工科大学」出身者は32人と、全体の6割以上を占めています。インド以外にも中国、台湾、シンガポール、イギリス、ベルギーなど様々な国から採用者が集まり、この採用で一気にメルカリの国際化が進みました。ハッカソンに参加して優勝した学生もメルカリにそのまま入社しています。学生いわく、インド工科大学で人気の機械学習を活かせるので、メルカリに興味を持つ学生が増えたようです。
参考:https://diamond.jp/articles/-/181725?page=2
参考:https://style.nikkei.com/article/DGXMZO24759350Y7A211C1000000/
インド人エンジニアの採用をお考えの方はこちらからお問い合わせ下さい。
メルカリの考え③:実力主義の文化
日本でよく見られる「年功序列型」ではなく、実力主義なところもメルカリの特徴です。
■採用エントリーで履歴書、性別すら不要な「完全実力主義」
メルカリでは「履歴書、氏名、性別不要」という採用方法をとりました。実力主義のメッセージを採用手法で表現したものです。従来のように媒体に求人を出し、「母集団を作る」戦略ではなく、「メッセージを強く発信して会社をブランディングする」という戦略で採用広報を展開しています。
メルカリの考え④:日本の文化を「当たり前」だと思わない関わり方
メルカリは日本の文化を「当たり前」とせず、外国人でも馴染みやすい環境づくりを積極的に行なっています。
■メルカリでは日本人特有の「空気を読む」は不要
海外の優秀なエンジニアが働きやすい環境は、生活のサポートが充実していることや、タイムスケジュールが自由で意思決定までのスピードがはやいことと言われています。ルールに縛られずに新しいことに取り組める環境が求められます。これは日本の従来の企業にはなかなか無い環境ですよね。実際日本人の明文化されない「空気を読む」に混乱する外国人は多いです。日本人は「みんな同じ前提を共有している」という意識になってしまいがちですが、前提が異なることを意識することが大切です。メルカリでは「空気を読む」ことは不要で、やさしいコミュニケーションを心がけるようにされています。
■知名度や採用のために労力を惜しまない
メルカリは「ハッカソン」をきっかけに、エンジニア志望の海外の学生からの知名度を高めることに成功しました。2017年10月ムンバイで開催されたハッカソンでは、賞金を賞金を1位2500米ドル、2位1500ドル、3位1000ドルに設定し、上位10位入賞者は日本に招待するという特典がありました。ハッカソンの様子が優秀な海外の学生の間のSNSでシェアされて、学生だけでなく大学の採用担当者にもメルカリが知られるようになりました。特にインドでは、大学で説明会〜採用までをまとめて行うことが多いため、大学の採用担当者に認められ、採用のためのセッティングを行なってもらう必要があります。学生だけでなく、大学の採用担当者に認知されなければ、優秀な学生を採用するのが難しいのです。メルカリではハッカソンを通して大学の採用担当者にも自社の取り組みを認知してもらうことができたため、優秀な海外の学生を大量に採用することができました。このように、日本とは異なる海外の採用事情を把握し、必要な人に認知してもらうマーケティング的な視点もメルカリの強みです。
■年功序列ではなく実力によって年収が異なる
メルカリは適正な能力評価をしているため、新入社員でもいきなり年収が高いことがあります。日本企業のネックである「年功序列型の賃金」ではありません。そのため、年功序列の形に馴染まない海外の学生もメルカリに注目してくれるのです。
■コミュニケーションのサポートが充実
メルカリでは、コミュニケーション面でのサポートが充実しています。お互いに「やさしい日本語」「やさしい英語」でのコミュニケーションを心がけるよう周知されているため、コミュニケーションレベルを相手に合わせる意識が浸透しています。また通訳、翻訳専門のスタッフが在籍しており、会議などをサポートしてくれます。日本語教師、英語教師が学習プログラムを開発して指導しているため、日本語の苦手な外国人も、英語が苦手な日本人も、お互いに学びながら仕事ができる環境が整っているのです。
補足:2018年に海外からメルカリに入社した社員の意見
2018年10月に外国籍のエンジニアを大量に採用しました。入社したメンバーはメルカリの何に魅力を感じたのか、どのような考えで日本に来たのかなどについてインタビューに答えています。その内容を簡単にまとめました。
■ソフトウェアエンジニアを目指した理由
下記の理由でソフトウェアエンジニアを目指したようです。
- コーディングを使った開発に興味が湧いたから
- 高校の授業でソフトウェア開発の基礎を学び、ソフトウェアによる問題解決の過程に面白さを感じたから
- データサイエンスを活用して世の中を良くすることができるのではないかと考えたため
早い段階からエンジニア職に興味を持った学生が多いようです。
■母国のエンジニアの就職状況
インド、シンガポール、台湾のそれぞれのエンジニアの就職状況は下記の通りです。
- インド:エンジニアは医者と並ぶ人気の職業。各国でインド人が活躍している
- シンガポール:テック業界は注目されていて、人が足りない状況。シリコンバレーが人気だが、難易度が高く、シンガポールに残る人が多い
- 台湾:世界で活躍するエンジニアが多くいるが、現地の企業に就職するケースが多い印象
特にインドではエンジニア職の人気が高く、国外でも活躍する人が多いことが分かります。
■メルカリを選んだ理由
- 日本のIT企業の中で注目度の高い有名な企業だったため
- 日本語を使わなくても働けるため
- 報酬体系がしっかりしているため
- 優秀なメンバーと働けると思ったため
- 当時、日本で唯一のユニコーン企業だった点に惹かれた
- メルカリが人の経済行動にどのような影響を与えるのか気になったため
- メルカリの戦略やマーケティング手法に関心があったため
IT企業としての興味と「働きやすさ」で注目を集めていることが分かります。
■日本の印象、メルカリの労働環境
- コンビニや交通アクセスの良さなど生活水準の高さに驚いた
- 家探しや言葉の不安は会社がサポートしてくれて助かった
- フレックス制が良い
- アクセスのいい六本木にオフィスがあるのが良い
- 社内のコミュニケーションツールを使いこなすのが大変
会社のサポートが充実していることで、不安は減ったものの、コミュニケーション面は難しいとの意見があります。
■今後の目標
- 一人前のエンジニアとして活躍できるようになりたい
- 開発環境や仕様を整備するポジションを目指したい
- テックリードを目指したい
- 世界的なカンファレンスに論文を出せるようになりたい
高い目標を持って仕事している方が多く見受けられます。
参考:https://mercan.mercari.com/articles/2019-01-29-140100/
まとめ:これらを踏まえて、今後の日本企業が取るべき行動とは ?
今回取り上げたメルカリが特別なのではなく、外国籍エンジニアを採用することが当たり前の世の中になってきています。日本人エンジニアが不足する中で、自国のエンジニアだけで今後事業を拡大していくのは厳しいという事をまずは認識しなければなりません。また、今後ますます国境を超えた人の流動性は高まり、日本人でさえも優秀な人は他国へ流れていくでしょう。優秀な日本人エンジニアも獲得できない、外国籍エンジニアは採用できる環境ではない、こうなってしまってはもう遅いです。企業はそうなる前に、早いうちから国籍関係なく素晴らしい仕事ができる環境を整えておくべきであり、またそのような環境になるべく挑戦をしていかなくてはなりません。
日本人はモノづくりが得意で、「良いプロダクトを作る」という面ではまだまだ世界でも戦っていけるでしょう。ただ、それを世界に広めるためには、やはりグローバル人材は必須な存在です。日本人の長所と外国籍エンジニアの自由でスピーディーな発想を掛け合わせて、世界に通用するサービスを作っていく事が、これからの日本企業の取るべき行動ではないかと思います。メルカリなどの上手くいっている企業を参考に、自社の強みを洗い出し、「どうしたら優秀な海外の人材を集められるか」改めて考えていく機会になれば幸いです。
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